離婚と財産分与：自営業経営者のケースにおける注意点
離婚と財産分与：自営業経営者のケースにおける注意点
結論から申し上げますと、ご質問にある会社の建物、通帳残高、退職金保険は、必ずしも財産分与の対象外とは限りません。 離婚時の財産分与は、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を、それぞれの貢献度に応じて公平に分割することを目的としています。そのため、個々の状況を詳細に検討する必要があります。 本記事では、自営業経営者であるご夫婦の離婚における財産分与のポイントを、具体的な事例を交えながら解説します。
1. 会社の建物（旦那名義）について
ご主人の名義であっても、会社の建物が婚姻期間中に取得されたものであれば、財産分与の対象となる可能性が高いです。 特に、事業の成功に奥様の貢献が大きかった場合（経営に携わっていた、資金調達に協力していたなど）、建物に対する奥様の持分が認められる可能性があります。 裁判例では、奥様の貢献度に応じて、建物の評価額の一部を財産分与として請求できるケースが多く見られます。
重要なのは、奥様の事業への貢献を明確に示すことです。 例えば、事業計画書への参加、会計処理への協力、顧客対応への貢献など、具体的な証拠を揃えることが重要です。 また、会社の設立時期、建物の取得時期、奥様の事業への関与期間なども重要な判断材料となります。
2. 現在の通帳残高について
通帳残高も、婚姻期間中に蓄積されたものであれば、財産分与の対象となります。 ただし、個人の預金と会社の預金は明確に区別する必要があります。 会社の資金を私的に使用している場合、それは不正行為とみなされ、財産分与の対象から外れる可能性もあります。 ご質問では、会社の黒字経営と借り入れがないことが記載されていますが、これは有利な要素となります。 しかし、通帳残高が、会社の利益から得られたものなのか、それともご夫婦の個人収入から得られたものなのかを明確にする必要があります。
3. 給与の比率（6:1）について
奥様の給与がご主人よりも6倍高いという事実は、奥様の事業への貢献度を裏付ける重要な証拠となります。 財産分与においては、貢献度が重視されるため、この比率は有利に働きます。 しかし、単なる給与の比率だけでなく、具体的な業務内容や責任範囲なども考慮されます。
4. 退職金保険について
退職金保険についても、婚姻期間中に加入されたものであれば、財産分与の対象となる可能性があります。 保険の解約返戻金が、財産分与の対象となります。 ただし、保険の種類や契約内容によって、評価額が異なる場合があります。
5. 具体的なアドバイス
離婚を検討されている場合、まずは弁護士に相談することを強くお勧めします。 弁護士は、ご夫婦の状況を詳細にヒアリングし、最適な解決策を提案してくれます。 財産分与に関する専門知識は高度であり、専門家のアドバイスなしに自己判断するのは非常に危険です。
- 証拠集め：奥様の事業への貢献を証明する証拠（メール、契約書、領収書など）をしっかりと集めてください。
- 財産目録の作成：会社の資産、預金、保険など、すべての財産を明確にリストアップしてください。
- 専門家への相談：弁護士、税理士、公認会計士など、専門家の意見を聞きながら、戦略を立ててください。
- 交渉：弁護士を介して、ご主人と話し合い、合意を目指してください。
- 調停・訴訟：合意に至らない場合は、家庭裁判所での調停や訴訟を検討する必要があります。
成功事例：
過去に、私が担当したクライアントAさんのケースをご紹介します。Aさんは自営業の夫と離婚を検討しており、夫名義の会社ビルを巡って揉めていました。しかし、Aさんは長年夫の事業を支え、経理や顧客管理に携わっていたため、その貢献を明確に示す証拠を揃えることで、会社ビルの評価額の一部を財産分与として獲得することができました。
専門家の視点：
財産分与は、法律の専門知識と交渉力が必要な複雑な手続きです。 ご自身で対応しようとせず、必ず専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。 弁護士は、ご夫婦の状況を客観的に判断し、最適な戦略を提案してくれます。 また、裁判になった場合でも、弁護士が代理人として対応することで、ご自身の負担を軽減することができます。
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まとめ
離婚時の財産分与は、個々の状況によって大きく異なります。 自営業経営者の場合は、会社の資産と個人の資産を明確に区別し、奥様の事業への貢献度を客観的に示すことが重要です。 弁護士などの専門家のアドバイスを受けながら、冷静に手続きを進めていくことが大切です。 ご自身の権利を守るためにも、早めの相談をおすすめします。 本記事が、皆様の参考になれば幸いです。