有給休暇と傷病休暇、どちらの休暇取得で給与が多い？定年退職を控えた従業員のケース
有給休暇と傷病休暇、どちらの休暇取得で給与が多い？定年退職を控えた従業員のケース
この記事では、病気で休職中の従業員について、有給休暇（有休）と傷病休暇のどちらを選択した方が給与が多いのかを解説します。特に、定年退職を間近に控えた従業員のケースを想定し、具体的な計算方法や注意点、さらに企業側の対応についても詳しく説明します。
有給休暇と傷病休暇の違いと給与への影響
まず、有給休暇と傷病休暇の大きな違いを理解することが重要です。有給休暇は、労働基準法によって労働者に与えられた権利に基づく休暇で、日々の給与が全額支給されます。一方、傷病休暇は、病気やケガによって仕事に就けない場合に取得する休暇で、給与の支給方法は会社によって異なります。多くの場合、傷病手当金制度が適用され、給与の一部が支給されますが、全額支給されるケースは少ないです。
そのため、単純に休暇日数だけを比較してどちらが多いと判断することはできません。従業員の受け取る金額は、それぞれの休暇制度における給与計算方法によって大きく変わってきます。
有給休暇の場合の給与計算
有給休暇の場合、通常は日々の給与が全額支給されます。これは、労働者が事前に取得を申請し、会社が承認した休暇であるためです。ただし、会社によっては、平均賃金を計算して支給する場合もあります。平均賃金とは、過去一定期間の賃金を平均した金額のことです。具体的には、過去1ヶ月間の賃金や過去3ヶ月間の賃金などを平均して算出されます。
- 計算例：月給25万円の従業員が10日間の有給休暇を取得した場合、1日あたりの給与は25万円÷20日（仮に月20日勤務とします）＝1万2500円となり、10日間で12万5000円が支給されます。
傷病休暇の場合の給与計算
傷病休暇の場合、給与の支給方法は会社によって大きく異なります。多くの企業では、傷病手当金制度を設けており、給与の一部を支給します。支給額は、会社の規定や従業員の勤続年数、傷病の状態などによって異なります。また、傷病手当金の上限が設定されている場合もあります。
労災保険が適用される場合は、労災保険から傷病手当金が支給されます。労災保険からの支給額は、賃金の約2/3程度です。健康保険が適用される場合は、健康保険から傷病手当金が支給されます。健康保険からの支給額は、賃金の約2/3程度で、支給期間は最長1年半です。
- 計算例：月給25万円の従業員が10日間の傷病休暇を取得し、傷病手当金制度で給与の60％が支給される場合、1日あたりの給与は1万2500円×0.6＝7500円となり、10日間で7万5000円が支給されます。
定年退職間近の従業員の場合の考慮事項
質問の従業員は2月に定年退職を控えているため、退職金や年金への影響も考慮する必要があります。有給休暇は、退職時に未消化分の有給休暇の買い取りを行う企業もあります。この場合、有給休暇を取得することで、退職金にプラスされる可能性があります。一方、傷病休暇は、退職金や年金に影響を与える可能性は低いですが、健康状態によっては、今後の年金受給額に影響が出る可能性も考慮すべきです。
具体的なアドバイス：従業員への対応
従業員に対しては、有給休暇と傷病休暇それぞれのメリット・デメリットを明確に説明することが重要です。具体的には、以下の点を説明しましょう。
- 有給休暇：給与全額支給、退職時の未消化分買い取りの可能性
- 傷病休暇：給与の一部支給、健康保険・労災保険からの支給の可能性、治療に専念できる時間確保
そして、従業員の健康状態を最優先に考え、本人の希望を尊重することが大切です。もし、従業員が判断に迷っている場合は、人事部や社労士などの専門家に相談することをお勧めします。
成功事例：従業員満足度向上と円滑な退職
ある企業では、定年退職を間近に控えた従業員が病気で休職することになった際、人事部が従業員と面談を行い、有給休暇と傷病休暇それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明しました。その結果、従業員は自身の状況と将来の計画を考慮し、最適な休暇を選択することができ、安心して治療に専念することができました。また、会社側も従業員の状況を把握することで、円滑な退職準備を進めることができました。この事例は、従業員の状況を理解し、適切なサポートを行うことで、従業員満足度向上と円滑な退職を実現できることを示しています。
専門家の視点：社労士のアドバイス
社労士の視点から見ると、従業員の状況や会社の制度を総合的に判断し、最適な休暇を選択することが重要です。特に、定年退職を間近に控えた従業員の場合、退職金や年金への影響も考慮する必要があります。そのため、会社規定の確認、健康保険や労災保険の適用、未消化有給休暇の処理など、様々な点をチェックする必要があります。専門家である社労士に相談することで、法令遵守と従業員の権利保護を両立した対応が可能になります。
まとめ：従業員の状況と会社制度を考慮した適切な対応を
有給休暇と傷病休暇のどちらが給与が多いかは、会社の制度や従業員の状況によって異なります。定年退職を間近に控えた従業員の場合、退職金や年金への影響も考慮する必要があります。従業員と良好なコミュニケーションを取り、本人の希望を尊重しながら、適切なサポートを行うことが、企業にとって重要です。
専門家への相談も有効な手段です。社労士などの専門家に相談することで、法令に則った対応を行い、従業員の権利を守りながら、円滑な業務運営を実現できます。