雇用保険と労災保険の加入義務と手続きを徹底解説！自営業の建築業者が知っておくべきこと

この記事では、自営業で建築業を営むあなたが抱える、雇用保険と労災保険に関する疑問を解決します。具体的には、加入義務、手続き方法、保険料、そして未加入の場合のリスクについて詳しく解説します。あなたの事業を守り、従業員を適切に保護するための情報を提供します。

雇用保険と労災保険のついて教えて下さい。

自営業で建築の仕事をしています。

職人さんを三人雇っているのですが、現状では雇用保険と労災保険には加入していません。

雇用主としては、加入の義務があるとは聞き及んではいるのですが加入に至らないままになってしまっています。

それぞれの加入手続きの方法と、金額を教えて下さい。

職人さんの年収はおよそですが、340万 290万２１０万です。

よろしくお願いします。

自営業で建築業を営むあなたは、日々、工事現場での安全管理、職人さんの労務管理、そして事業の運営と、多岐にわたる業務をこなしていることと思います。その中で、従業員の雇用保険と労災保険への加入について、疑問や不安を感じているかもしれません。特に、加入義務があることは知っていても、手続きの煩雑さや保険料の負担、未加入の場合のリスクなどを考えると、なかなか一歩を踏み出せないという状況もあるでしょう。

この記事では、そのようなあなたの悩みを解決するために、雇用保険と労災保険の基礎知識から、加入手続き、保険料の計算方法、そして未加入の場合のリスクまで、具体的に解説していきます。この記事を読めば、あなたは、これらの保険に関する正しい知識を身につけ、安心して事業を運営できるようになるでしょう。

1. 雇用保険と労災保険の基礎知識

まず、雇用保険と労災保険がどのようなものか、その基本的な知識を整理しましょう。

1-1. 雇用保険とは

雇用保険は、労働者が失業した場合や、労働者の雇用の安定を図るための保険です。具体的には、以下のような場合に給付が行われます。

失業給付: 会社都合や自己都合で離職した場合に、一定期間、生活費を補助する給付金が支給されます。
育児休業給付: 育児休業を取得した労働者に対して、給付金が支給されます。
介護休業給付: 介護休業を取得した労働者に対して、給付金が支給されます。
教育訓練給付: 労働者のキャリアアップを支援するため、教育訓練を受講した場合に、費用の一部が補助されます。

雇用保険は、労働者の生活を安定させ、再就職を支援するための重要な制度です。

1-2. 労災保険とは

労災保険は、労働者が業務中や通勤中に負傷したり、病気になったり、死亡した場合に、その損害を補償する保険です。具体的には、以下のような給付が行われます。

療養（補償）給付: 治療費や入院費などが支給されます。
休業（補償）給付: 療養のために休業した場合、休業中の給与の一部が補償されます。
障害（補償）給付: 障害が残った場合に、障害の程度に応じて年金または一時金が支給されます。
遺族（補償）給付: 労働者が死亡した場合、遺族に対して年金または一時金が支給されます。

労災保険は、労働者の安全と健康を守り、万が一の事態に備えるための重要な制度です。

2. 加入義務と対象者

雇用保険と労災保険には、加入義務と対象者が定められています。自営業の建築業者が、これらの保険に加入する必要があるのか、誰が加入対象となるのかを確認しましょう。

2-1. 雇用保険の加入義務と対象者

雇用保険は、原則として、労働者を一人でも雇用している事業主は加入義務があります。ただし、以下の場合は加入対象外となります。

個人事業主とその家族: 個人事業主本人とその家族は、原則として雇用保険の加入対象外です。
役員: 法人の役員は、原則として雇用保険の加入対象外です。
短時間労働者: 1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は、原則として雇用保険の加入対象外です。ただし、例外規定もあります。

あなたのケースでは、職人さんを3人雇用しているため、雇用保険への加入義務があります。職人さんの年収に関わらず、雇用契約に基づき労働している場合は、雇用保険の加入対象となります。

2-2. 労災保険の加入義務と対象者

労災保険は、原則として、労働者を一人でも雇用している事業主は加入義務があります。労災保険は、雇用形態に関わらず、労働者であれば加入対象となります。

あなたのケースでは、職人さんを3人雇用しているため、労災保険への加入義務があります。職人さんは、労災保険の加入対象となります。

建設業における労災保険の注意点: 建設業は、他の業種に比べて労災事故のリスクが高いため、労災保険の重要性が特に高いです。また、一人親方（個人事業主として建設業に従事する人）は、特別加入制度を利用することで、労災保険に加入することができます。

3. 加入手続きの方法

雇用保険と労災保険に加入するための手続きは、それぞれ異なります。ここでは、それぞれの加入手続きについて詳しく解説します。

3-1. 雇用保険の加入手続き

雇用保険の加入手続きは、以下の手順で行います。

管轄のハローワークへ相談: まずは、事業所の所在地を管轄するハローワークに相談し、必要な書類や手続きについて確認します。
雇用保険適用事業所設置届の提出: 事業を開始した日から10日以内に、「雇用保険適用事業所設置届」を管轄のハローワークに提出します。この届出には、事業所の情報や、雇用する労働者の情報などを記載します。
被保険者資格取得届の提出: 労働者を雇用した場合は、雇用した日の翌月10日までに、「被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出します。この届出には、労働者の氏名、生年月日、雇用開始日、賃金などを記載します。
保険料の納付: 雇用保険料は、毎月、労働者の給与から控除し、事業主がまとめて納付します。

必要な書類:

雇用保険適用事業所設置届
労働者名簿
賃金台帳
印鑑

3-2. 労災保険の加入手続き

労災保険の加入手続きは、以下の手順で行います。

管轄の労働基準監督署へ相談: まずは、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に相談し、必要な書類や手続きについて確認します。
保険関係成立届の提出: 事業を開始した日から10日以内に、「保険関係成立届」を管轄の労働基準監督署に提出します。この届出には、事業所の情報や、事業の種類、労働者の人数などを記載します。
概算保険料の申告と納付: 労災保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を対象として、概算で申告し、納付します。
確定保険料の申告と納付: 1年間の保険料を精算し、確定保険料を申告し、納付します。

必要な書類:

保険関係成立届
労働者名簿
賃金台帳
印鑑

4. 保険料の計算方法

雇用保険と労災保険の保険料は、それぞれ計算方法が異なります。ここでは、それぞれの保険料の計算方法について詳しく解説します。

4-1. 雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、以下の計算式で算出します。

雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

雇用保険料率は、事業の種類や年度によって異なります。令和6年度の雇用保険料率は、以下の通りです。

一般の事業: 労働者負担0.6%、事業主負担0.95%
農林水産・清酒製造の事業: 労働者負担0.7%、事業主負担1.05%
建設の事業: 労働者負担0.6%、事業主負担1.05%

あなたのケースでは、建設業に該当するため、事業主負担は1.05%となります。職人さんの年収がそれぞれ340万円、290万円、210万円の場合、賃金総額は840万円です。したがって、雇用保険料は、840万円 × 1.05% = 88,200円となります。

例:

職人A: 340万円 × 1.05% = 35,700円
職人B: 290万円 × 1.05% = 30,450円
職人C: 210万円 × 1.05% = 22,050円
合計: 88,200円

4-2. 労災保険料の計算方法

労災保険料は、以下の計算式で算出します。

労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率

労災保険料率は、事業の種類によって異なります。建設業の場合、事業の内容によって細かく料率が定められています。令和6年度の建設事業の労災保険料率は、0.3%～1.3%です。あなたの事業内容に該当する料率を確認してください。

あなたのケースでは、賃金総額は840万円です。労災保険料率が0.5%の場合、労災保険料は、840万円 × 0.5% = 42,000円となります。

例:

職人A: 340万円 × 0.5% = 17,000円
職人B: 290万円 × 0.5% = 14,500円
職人C: 210万円 × 0.5% = 10,500円
合計: 42,000円

5. 未加入の場合のリスク

雇用保険と労災保険に未加入の場合、様々なリスクが発生します。これらのリスクを理解し、適切な対応を取ることが重要です。

5-1. 雇用保険未加入のリスク

労働者の不利益: 労働者が失業した場合や、育児休業、介護休業を取得した場合に、雇用保険からの給付を受けられません。
事業主の責任: 労働者が離職した場合、事業主は、労働者に対して、未加入期間中の給付相当額を賠償する責任を負う可能性があります。
追徴金の発生: 雇用保険に未加入であった期間の保険料に加えて、追徴金が課されることがあります。
行政指導: ハローワークから、加入を促す指導や勧告を受けることがあります。悪質な場合は、事業所名が公表されることもあります。

5-2. 労災保険未加入のリスク

労働者の不利益: 労働者が業務中や通勤中に負傷したり、病気になったり、死亡した場合に、労災保険からの給付を受けられません。
事業主の責任: 労働者が労災事故に遭った場合、事業主は、労働者に対して、損害賠償責任を負う可能性があります。
罰則: 労災保険に未加入であった場合、労働基準監督署から、罰金が科されることがあります。
追徴金の発生: 労災保険に未加入であった期間の保険料に加えて、追徴金が課されることがあります。

これらのリスクを回避するためにも、雇用保険と労災保険への加入は不可欠です。

6. 建設業特有の注意点

建設業は、他の業種に比べて、労災事故のリスクが高いという特徴があります。そのため、労災保険への加入だけでなく、安全管理体制の構築も重要です。

6-1. 安全管理体制の構築

建設業では、以下の安全管理体制を構築することが求められます。

安全管理者の選任: 規模の大きな事業所では、安全管理者の選任が義務付けられています。
安全衛生管理計画の策定: 労働災害を防止するための計画を策定し、実施します。
作業員の安全教育: 作業員に対して、安全に関する教育を実施します。
作業環境の整備: 作業場所の整理整頓、保護具の着用など、作業環境を整備します。
リスクアセスメントの実施: 労働災害のリスクを評価し、対策を講じます。

6-2. 一人親方労災保険特別加入制度

一人親方（個人事業主として建設業に従事する人）は、労災保険に加入することができません。しかし、一人親方労災保険特別加入制度を利用することで、労災保険に加入することができます。この制度は、一人親方の業務中の事故や、通勤中の事故によるケガや病気を補償します。

7. まとめと今後のアクションプラン

この記事では、自営業の建築業者が知っておくべき、雇用保険と労災保険に関する情報を解説しました。これらの保険は、あなたの事業と従業員を守るために不可欠なものです。以下に、今回の内容のまとめと、今後のアクションプランを提示します。

7-1. まとめ

雇用保険と労災保険は、労働者の生活と安全を守るための重要な制度です。
自営業で労働者を雇用している場合、原則として、雇用保険と労災保険への加入義務があります。
加入手続きは、管轄のハローワークまたは労働基準監督署で行います。
保険料は、賃金総額に基づいて計算されます。
未加入の場合、労働者への補償や罰金などのリスクがあります。
建設業では、安全管理体制の構築も重要です。

7-2. 今後のアクションプラン

加入手続きの実施: まずは、管轄のハローワークと労働基準監督署に相談し、加入手続きを進めましょう。
保険料の計算と納付: 従業員の賃金に基づいて、雇用保険料と労災保険料を計算し、納付しましょう。
安全管理体制の構築: 安全管理者を配置し、安全衛生管理計画を策定するなど、安全管理体制を構築しましょう。
定期的な見直し: 保険料や安全管理体制は、定期的に見直しを行い、常に適切な状態を維持しましょう。

これらのアクションプランを実行することで、あなたは、安心して事業を運営し、従業員を守ることができるようになります。

雇用保険と労災保険に関する手続きは、最初は難しく感じるかもしれませんが、一つ一つ丁寧に確認し、進めていくことで、必ず理解できるようになります。もし、手続きや保険料の計算などで不明な点があれば、専門家である社会保険労務士に相談することも検討しましょう。

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